2020年4月に改正民法が施行されることに決まりました。
明治時代に作られた民法が120年を経て初めて全般的に見直されます。
不動産賃貸経営へ与える影響はどのようなものがあるか?民法改正(債権法改正)のポイントをご紹介します。
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http://www.moj.go.jp/content/001289628.pdf
敷金返還の義務化
改正民法では、現行法で直接規定がない敷金授受の法律関係を追加し、敷金の意義、敷金返還債務の発生要件、敷金の充当に関する規定が新設されました。
ただし、改正民法における敷金の概念・定義は現行法の裁判例の解釈を明文化したもので、実務上、大きな影響があるわけではありません
改正民法でも敷金返還時期については、物件返還時であり、この点も現行法での裁判例・実務での取り扱いと変更はありません。
原状回復の義務範囲
改正民法により、賃借人は通常の使用によって生じた傷みや経年劣化(通常損耗)については原状回復義務を負わないことが明文化されました。
現行法下において、原状回復範囲をめぐるトラブルは不動産経営における代表的な紛争類型でしたが、通常損耗については、特約がない限り、賃借人の原状回復の範疇に含まれないことが改正民法で規定されました。
他方、特約があれば、賃貸借契約において、通常損耗以外の部分について賃借人に原状回復義務を負わせることは、改正民法においてもなお可能です。
実際には、特約がなされるケースが多いでしょうし、特約があればそれに従い、特約なければ通常損耗は原状回復義務の対象でないとの改正民法の新設規定も、従前の裁判例・実務での取り扱いと同様であり、ルールを明文化して紛争予防に役立つものです。
従前の実務の取扱いを変更させるものではないので、この点も影響は限定的といえます。
連帯保証人の保護
現行民法では、賃貸借の連帯保証人の責任は基本的に無限定でした。
改正民法では、賃貸借契約の個人連帯保証人保護のための規定が新設され、不動産賃貸借契約において連帯保証人を付けるときは、必ず、契約締結時に極度額(連帯保証人の責任限度額)を定めなければならないことになりました。
極度額を定めていない連帯保証条項は無効となりますので、改正民法施行後の賃貸借契約書の連帯保証条項は、「連帯保証人は、賃貸人に対し、賃借人が本契約上負担する一切の債務を極度額~円の範囲内で連帯して保証する。」といった規定に変更する必要があります。
この点は、現行法と賃貸借契約の連帯保証のルールを大きく変更するものであり、オーナー側にとっては連帯保証契約の締結が厳格となる影響があります。
実務での契約書条項の変更の準備が求められます。
一部滅失等による賃料減額
現行法では、目的物が一部滅失した場合に賃料の減額請求や解除をすることができるとの規定でしたが、目的物の一部の使用収益をすることができなくなった場合、賃料の減額又は解除を認めるとともに、賃料の減額は賃借人の請求がなくともに当然に減額されることとなりました。
一部滅失・一部使用不能状態が生じた場合、当然に賃料減額が生じたとして賃料滞納額をめぐってトラブルが生じる可能性があります。
まとめ
今までとの変更点について賃貸借契約書の確認し、特約事項や追記事項などを精査し、改正法後スムーズな新しい賃貸借契約書に基づいた運用スキームなどが必要になります。
また、オーナー様も民法改正にあたり、予め準備する必要もございます。