先日行われました住民投票により、大阪都構想が再度否決されました。
事前では非常に拮抗しており、最後までどちらに転ぶか分からなかった訳ですが、最終的に明暗を分けたのは一体何だったのでしょうか?
結果的に、なぜ改革よりも現状維持を望む人が多かったのでしょうか?
主な理由をいくつか挙げてみたいと思います。
- 全体的に説明が不十分で分かり難い
- 大阪市が消滅してしまう事の寂しさ
- 不確実な情報に対する対応の仕方
「大阪都構想が実現したら、結局今とどう変わるの?」
投票間際になっても、ニュースでこういう内容を話している市民の場面が流れていました。投票が終わった今でも、はっきりと「大阪都構想」を説明できる人は少ないのではないでしょうか。
そして都構想が実現したら、明確にどうなるのかが浸透していなかったために、結局良く分からないので、反対しようという人々が、結構多かったのではないかと考えられています。
つまり、「内容が良く分からない⇒都構想で良くなるかもしれないが、変化が起こってマイナスなこともあるかも⇒今と違う事が起こったら嫌だから、とりあえず反対しよう」という考え方です。
別の理由としては、大阪市が消えてしまうという心情的な理由もあったと考えられます。
もし横浜市が無くなることになれば、愛着を感じでいる神奈川県民は嫌でしょうし、神戸市が無くなることになれば、同じく兵庫県の方は嫌でしょう。
大阪市で何十年も過ごしていれば、大阪市民で無くなることを寂しく感じるのも分かります。
住民サービスの維持ができなくなり、税金や水道代などが値上がりするのではないかと考えた人も多くいたと思われます。
例えば、反対派は水道料金が上がると話しますが、賛成派は上がりませんと話します。
同様に反対派は敬老パスが無くなると話しますが、賛成派はそういったサービスは無くならないと断言をします。
一体どちらが正しくて、どちらを信用したらよいのか判断が出来なくなってしまいます。
そういった状況では、とにかく分かりやすくシンプルな情報が価値を持ちます。
結局のところ、賛成派は具体的な説明が足りておらず、住民に十分な理解が得られなかったのではないでしょうか。
そして、今回反対した人の中に、現状の大阪に満足している方々がいるという点も見逃せません。
2008年に橋下徹知事が就任して以来、住民サービスは大きく改善されたと評価されています。
- 妊娠検査の無料化
- 中学校給食の実施
- 小中学校のエアコン設置
- 私立高校の授業料無償化
などがそうです。
実際に最近の大阪市を評価している方々は、
- すでに住民サービスに満足しているから、このまま何も変化しないで欲しい
- 維新の会は良いが、都構想は良く分からないので反対
という考えを持っており、今回は反対したのではとみられています。
吉村知事は新型コロナ対策で、独自の対策案を出し評価を得ましたが、その評価は大阪都構想には結び付かなかったと言えます。
【課題】
二重行政の課題が残ったまま。
現在は知事と市長とが同じ党なので、府と市の調整が上手くいっていますが、知事と市長が別勢力になると、以前の状態に戻ってしまうのではないか?
リーダーを一本化して、決定事項をスムーズにするという根本的な問題点が解消されていません。
今回の投票では、大阪市中の北部と南部で大きく票が分かれました。
改めて浮き彫りになった南北格差を、今後どうしていくかも重要な課題です。
【今後】
大阪市民は自分たちで下した判断ですので、今後その結果を受け止めていかなければなりません。
今回の結果により、これまで大阪の改革を進めてきた政策の柱が無くなった大阪維新の会の勢力が弱まる事は否定できません。
松井市長も政治家引退を発表し、新たな世代へ転換を図るため、大阪維新の会の次期代表は、吉村知事が有力視されています。
とはいえ、急に体制が変わるわけでもなく、大阪では万博やIR(統合型リゾート)、大阪駅前開発など様々なイベントが控えています。
コロナの影響が無くなった後の事を考えると、他の都市よりも期待値が高く、投資対象としての魅力に根本的な変化はないと考えられます。