マンション投資で家賃収入が発生すると、同時に納税の義務が発生します。
その際、賃貸経営で生じる様々な支出を経費として計上すると、利益を圧縮して節税することができます。
では不動産所得に対し、何が必要経費にでき、何が必要経費にできないのか。
実際に確定申告の際にはどうすればいいのかなどを解説していきます。
不動産所得
まず、不動産所得は国税庁のサイトによると以下の様に定義されています。
総収入金額-必要経費=不動産所得
総収入金額
総収入金額には、貸付けによる賃貸料収入のほかに、次のようなものも含まれます。
- 名義書換料、承諾料、更新料又は頭金などの名目で受領するもの(礼金・更新料等)
- 敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの(敷金償却等)
- 共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など(家賃の他、管理費・共益費等)
必要経費
必要経費とすることができるものは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるものであり、主なものとして貸付資産に係る次に掲げるものがあります。
(1)税金
- 固定資産税・都市計画税(毎年)
- 不動産取得税(購入時1回のみ)
- 収入印紙代
(2)保険料
- 火災保険料
- 地震保険料
(3)賃貸管理会社への費用
- 管理委託手数料
- 広告料
(4)司法書士への報酬
- 登記費用(所有権保存登記・所有権移転登記・抵当権設定登記等)
(5)減価償却費
建物には構造等で法律で耐用年数が設定されています。
- 鉄筋コンクリート造 47年
- 鉄骨造 34年
- 木造 22年
建物の購入にかかった費用をこの年数で割った金額を減価償却費として毎年、費用として計上することができます。
物件:新築マンション(RC造・定額法47年・償却率0.022)
購入価格 2,000万円(内土地価格600万円 建物価格1,400万円)
減価償却費 1,400万円✕0.022=30.8万円
この場合、年間30.8万円を47年間毎年減価償却できるので、実際の支出がない経費として計上できます。
支出が伴わないのに帳簿上の利益を減らすことができるので、節税に効果を発揮します。
(6)修繕費
- 毎月の管理費・修繕積立金
- ハウスクリーニング代
- クロス交換
- 給湯器交換
- エアコン交換
ただし、室内の機能を向上させるための設備の費用に関しては、修繕費として一括での経費計上することはできません。固定資産となるため、減価償却する必要があります。
(7)ローンの利息
融資を受けて物件を購入した際には、毎月決まった額の返済をしていきます。
そのうちの建物を取得するために受けた借入金の金利は経費とすることができます。
また、融資を受けた年の融資手数料も経費になります。
(8)その他
- 交通費(物件視察の場合)
- 書籍代(不動産に関する本)
- 交際費(手土産代など)
など、常識の範囲内で経費に計上できます。ただ、あまりにも頻度や金額が多い場合は税務署のチェックが入る可能性もあります。
必要経費をして計上できないもの
- 住民税
- 所得税
マンション投資に関係なく発生するものなので経費にはなりません。
損益通算
不動産所得は、給与所得と合算して確定申告が可能です。
不動産物件の運営で損失が発生していた場合でも、確定申告を行えば納めすぎていた税金が還付されることがあります。
確定申告で給与所得控除後の所得金額と不動産収支内訳書上の赤字を相殺すること、これが損益通算です。
特に不動産は、購入初年度は購入時の諸費用が必要になるため、年間の数字では損失になるケースがあります。
確定申告時に必要なもの
総収入金額から必要経費を引き、その金額が20万円以上であった場合は確定申告をしなければいけません。
確定申告の時期は毎年2月16日から3月15日までの1ヶ月間です。
確定申告をおこなう場合は、所定の書類を提出し税額を確定させることになります。
青色申告、白色申告とそれぞれで提出するものが違うことに注意しましょう。
青色申告
確定申告書Bと不動産所得用の青色申告決算書、収支内訳書
白色申告
確定申告書Bと不動産所得用の収支内訳書
白色申告の場合は、収支報告書に数字を記入していきます。
基本的に領収書や収支の証拠などは、提出する必要はありません。
ただし、税務署が収支をチェックしていて経費が大きすぎる、家賃が実際の物件と比較して少ないなど異常があった場合には、証拠となる物を提出しなければいけません。
そのため7年間は領収書などを保管しておく義務があります。確定申告をして税務署が確認の必要を感じた時に、経費の証拠が提示できなければ追徴の税金が課せられることもあります。
確定申告をする際に、年間の支出と経費をまとめた帳簿を作成する必要があります。
白色申告の場合は事前申告の必要がなく、帳簿は簡単な単式簿記で作成します。
前年の1月1日から12月31日までの「収支内訳書」と「確定申告書B」を、毎年2月16日~3月15日の期間で提出します。
一方で青色申告は10万円、もしくは65万円の控除を受けられるなど税制面での大きなメリットがありますが、事前申告が必要です。
65万円の控除を受けるには、不動産投資の場合は5棟10室、つまり5つの物件、もしくは10部屋以上を投資家として所有していることが条件になっています。
はじめて青色申告をする人は、3月15日までに「青色申告申請承認書」を税務署に提出する必要があります。
また事業を開始して青色申告を行いたいという人の提出期限は、開業から2ヶ月以内なので注意してください。帳簿も複式簿記で作成します。
1月1日から12月31日までの以下の書類を、期間内に提出する必要があります。
- 損益計算書
- 損益計算書の内訳
- 賃借対照表
- 確定申告書B
その後、納税額が確定するので、納付書に従って納税を行います。
決算関係の書類と帳簿、通帳や請求書、領収書などは書類の内容によって7年間さかのぼって確認を求められることがあるので、保管しておきましょう。
損益計算書の作成に当たっては、帳簿ソフトなどで日頃からつけておくと効率的です。
まとめ
マンション投資をする際、多くの経費が発生します。経費として計上できるもののチェックを怠ると、それだけで数万円も税額が変わることがあります。経費のチェック漏れがないよう心掛けましょう。